葬儀式関連用語と解説

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つや(通夜)

おつや、夜伽(よとぎ)、ともいう。葬式の前の夜、親族や知人が亡き人の霊を守り、慰めることをいう。死亡から葬儀までのあいだ二夜をおくるときは、死亡当日の夜は、仮通夜として、通夜は翌日に営まれる。昔は近親者だげでつとめたが、現在では、死者に対する杜会的儀札となって、少しでも関係を持つものは、努めて通夜の席に出るようになった。
 夜を通して死者を守る、ということであったが、近ごろは半通夜といって、午後六〜七時ごろから午後十時ごろまでに営まれることも多くなった。しかし弔問客が帰っても、近親者だけは、夜が更けるまで遺体のそばに在って、仏前のローソクと線香の灯は一晩中消さないように心すべきである。通夜の式は、お寺さんの読経で始まる。通夜の席は、特にきまりはないが、遺族側が祭壇にむかって右に並ぶ場合と、左右に関係なく棺に近いところに座るという場合とあるが、遺族側が一方に並んで座った方が、通夜客に対して弔問を受けやすいという利点がある。
 読経が続いているうちに焼香をする。喪主からはじめ、参列者すべての人の焼香が終り、またはお寺さんの法話が終ったところで式は終了する。仮通夜では、喪服は着る必要はないが、派手なもの、けばけばしいものでない地味な服装にする。通夜の式のときも、喪服を着なければならないというきまりはないが、遺族は喪服を着ておいた方がよい。女性の化粧で、赤いマニュキアや濃いアィシャドウなどは避けた方がよい。
 読経が終ると、弔問客は、なるべく早く退席するのが常識。弔問客が帰った後、親しい人の間で夜食を共にする。これを通夜振る舞といい、通夜の客全部に茶菓や食事を出すならわしが広く行なわれている。現在では、通夜振る舞は、出前のすしや、折詰ですましたり、茶菓だけにすることが多くなったが、昔は、精進料理を作って出していた。
 通夜の仏前(祭壇前)では、遺族と先に来ている弔問客に挨拶をし、仏前に進み、一拝する。それから香、供物を供え、線香がある場合はそれに火をつけて供え、礼拝合掌して後に退がり、遺族に一礼してもとの席にもどる。通夜は、古い喪屋生活の遺風である。
 神式の通夜は、通夜祭、遷霊祭のあと、遺族、近親者、友人などが集まり、飲食を共にする。神道では、死の穢れを忌む慣習が強く残っていて、死者の家の火も穢れから避けるために、通夜振舞いは、他の家で煮炊きしたものか、店屋ものにする。
 キリスト教における通夜は、神父(牧師)を招いて行なうのが普通であるが、信者が神父(牧師)に代わって司式してもよい。一般的順序は、(一)、祭服に着替えた神父が棺前に立ち、一同が聖歌を唱う。(二)、神父の聖書朗読と説教。(三)、一同「通夜の祈り」(聖書の中の言葉、詩篇、祈り)を唱える。(四)、神父、遺族、参列者の順に、撒水(さんすい)、献花、焼香のいずれかを行なう。(五)、遺族代表の挨拶(焼香の前に行なってもよい)。以上のあと簡単な茶菓を出すか、会食をし、故人の思い出を語りあったりする。棺の前には、故人の写真と生花、ローソク、十字架などを置くが、別にきまりはない。本来キリスト教では通夜は儀式化されていず、日本の慣習にしたがったものである。

参考文献:「葬儀大事典」(鎌倉新書)  | yeohoo |