葬儀式関連用語と解説

< 目次に戻る >

こうでん(香典・香奠)

本来は死者の霊に供える香の代金という意で、親類、知人、から喪家へ贈るもの。今日ではたいてい金銭であるが、古くは、金銭より米麦など食料がつかわれており、親しい身内と一般の村民とでは量がちがっていた。親しい身内である子や兄弟には、1俵香奠(米・麦の1俵と酒1樽)を一般の人々には村香奠(米1または2升と野菜をそえるところもある)をもっていっていた。
 これらは、忌のかかる親しいものたちが、一緒に食事をするため喪家へもってゆく食料であったと見られている。飲食を共にし、まだ不安な状態の死者とその家のものを、すこしでもやわらげようとしたものであるが、のちになって忌の観念がゆるみ、一般の人々も喪家で飲食をともにするようになり、近親者は特別に大きな香奠をおくる傾向になった。一般の人々はもともと食事は喪家とは別々にし、喪家のための手伝いをするだけであった。手伝う人々は、喪家の外にむしろをしいて食事をしたり(庭かまど)、または、忌のかからない家を借りて食事をした(精進宿、めし宿、村宿)ので、村香奠は、本来はそういう食事のための食料であった。
 今日では、小奉書(こぼうしょ)または美濃紙で、祝儀の場合とは反対に、向って左側を上にして包み、黒白の水引を黒を右にしてかけ、結び切りにする。略式には、市販の不祝儀袋を用いる。上書きは、神式は玉串料、仏式では、御香奠(典)、御仏前とし、不明のときや、その他の宗教関係では、御霊前とする。下部の左よりに自分の姓名を書く。今日では、喪家の金銭的負担を軽くする意味合いがあり、香奠をおくることは、つきあいの義理として最も重んぜられている。喪家は、香奠をうけるための帳場をつくり、贈り主とその高を記録し、中陰の忌明けに香奠がえしをする。

参考文献:「葬儀大事典」(鎌倉新書)  | yeohoo |