葬儀式関連用語と解説

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さんずのかわ(三途の川)

民間信仰のうち、死者の渡らされるという川。平安末期にできた『地蔵菩薩十王経』(偽経)によれば、死者はまず、死出の山に登り、石塊(いしころ)だらげの険呑なる道に苦しみ、そのあと七日目(初七日)に、三途の川にいたる。この川を渡るさい、善人ば橋を、軽罪人は浅瀬を、重罪人は深瀬を渡らねばならない。
 岸にたどりつくと、奪衣婆(だつえば)が着物を剥ぎとり、懸衣翁(けんえおう)がそれを木の枝に引掛けるという。のちに、渡し守のストーリーも加わり、三途の川の渡り賃を、死者にそえるならいも生じた。明治の頃までは、六道(地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天)にちなみ、六文の銭が一般であった。死者の首に掛けた頭陀(ずだ)袋に入れた。しかし、今日ではそうした俗習もほとんど絶えている。遺体の上に守り刀をおく風習も、事なく三途の川を越えて浄土へ行けるようにとのねがいによっている。日本にかぎらず、ギリシャ、インド、古代エジプトにおいても、俗世と来世のあいだに川があるという信仰があった。ギリシャでは、渡し守のために、死者の口中に銀貨をくわえさせるという風習がある。

参考文献:「葬儀大事典」(鎌倉新書)  | yeohoo |